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大阪地方裁判所 昭和45年(わ)1552号 判決

一、本店所在地

大阪市住吉区釜口町四〇番地

協同ベニヤ株式会社

右代表者代表取締役

菅原一郎

二、本籍

神戸市東灘区本山町森字天神町七番地

住居

右と同じ

協同ベニヤ株式会社代表取締役

菅原一郎

大正六年五月一七日生

右両名に対する法人税法違反被告事件について、検察官田辺信好出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人協同ベニヤ株式会社を罰金二、五〇〇万円に、被告人菅原一郎を罰金三六〇万円に処する。

被告人菅原一郎が右罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人協同ベニヤ株式会社は、大阪市住吉区釜口町四〇番地に本店を置き、ベニヤ板、化粧合板の製造販売等を業とするもの、被告人菅原一郎は、右協同ベニヤ株式会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人菅原一郎は、被告人協同ベニヤ株式会社の業務に関した法人税を免れようと企て被告人協同ベニヤ株式会社の経理部長藤井充博らと共謀の上、

第一、被告人協同ベニヤ株式会社の昭和四一年四月一日から昭和四二年三月三一日までの事業年度において、その所得金額が二三五、八四四、七一四円、これに対する法人税額が八〇、七九七、三〇〇円であるのにかかわらず、公表経理上売上の一部を除外し、架空仕入を計上し、かつ、たな卸原材料の一部を除外する等の不正行為により、右所得金額中一四〇、〇〇一、五五五円を秘匿した上、昭和四二年五月三一日大阪市住吉区住吉税務署において、同署長に対し、右事業年度の所得金額が九五、八四三、一五九円、これに対する法人税額が三一、八〇一、五〇〇円である旨の虚儀の法人税確定申告書を提出し、よって同年度分の法人税四八、九九五、八〇〇円を免れ、

第二、被告人協同ベニヤ株式会社の昭和四二年四月一日から昭和四三年三月三一日までの事業年度において、その所得金額が一五八、八〇五、八一九円、これに対する法人税額が五三、七二五、二〇〇円であるのにかかわらず、公表経理上たな卸原材料について、その一部を除外し、かつ、不当な評価減を行なう等の不正行為により、右所得金額中八二、九六一、二二六円を秘匿した上、昭和四三年五月三一日前記住吉税務署において、同署長に対し、右事業年度の所得金額が七五、八四四、五九三円、これに対する法人税額が二四、六九三、八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、よって同年度分の法人税二九、〇三一、四〇〇円を免れ、

第三、被告人協同ベニヤ株式会社の昭和四三年四月一日から昭和四四年三月三一日までの事業年度において、その所得金額が二九二、二二二、三一八円、これに対する法人税額が一〇〇、二二五、一〇〇円であるのにかかわらず、公表経理上売上の一部を除外し、架空仕入を計上し、かつ、たな卸原材料の不当な評価減を行なう等の不正行為により、右所得金額中一四七、三二六、一三〇円を秘匿した上、昭和四四年五月三一日前記住吉税務署において、同署長に対し、右事業年度の所得金額が一四四、八九六、一八八円、これに対する法人税額が四八、六六三、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、よって同年度分の法人税五一、五六一、六〇〇円を免れ

たものである。

(証拠)

判示全事実につき

一、蛯原理和の検察官に対する昭和四五年五月二一日付、同月二二日付、同月二三日付、同月二五日付、同月二八日付各供述調書

一、藤井充博の検察官に対する各供述調書(八通)

一、収税官吏河上義次作成の売上・仕入・支払手形・受取手形検討書・振替伝票・元帳・調査記録報告書各一綴

一、登記官奥村栄一作成の法人登記薄謄本

一、被告人菅原一郎の検察官に対する昭和四五年五月一九日付、同月二三日付、同月二六日付、同月二七日付各供述調書

一、収税官吏作成の被告人菅原一郎に対する昭和四四年一二月九日付、同月一二日付、同月一七日付各質問てん末書

一、領置してあるプリント在庫出入帳一綴(昭和四六年押第三〇五号の六)、原木出入帳一綴(同号の八)

判示第一、第二の各事実につき

一、収税官吏の蛯原理和に対する昭和四五年四月二三日付質問てん末書

一、蛯原理和の検察官に対する同年五月一九日付供述調書

一、領置してある昭和四三年三月末在庫表一綴(前同押号の一一)

判示第二、第三の各事実につき

一、収税官理の藤井充博に対する昭和四五年四月二〇日付質問てん末書

一、蛯原理和作成の株式会社岩倉組に対する売上げ確認書

一、領置してあるフロア在庫帳一綴(前同押号の五)、昭和四二年四月より昭和四三年三月までの使用原木綴三綴(同号の一二)

判示第一の事実につき

一、収税官吏中川正一認証の法人税確定申告書謄本(自昭和四一年四月一日至昭和四二年三月三一日)

一、収税官吏向井正夫作成の調査記録報告書

一、領置してある第一五期会計元帳日計表五綴(前同押号の一)、同会計元帳月次試算表一綴(同号の二)、原木出入綴六綴(同号の一〇)、一六期化粧合板元帳一綴(同号の一三)

判示第二の事実につき

一、収税官吏中川正一認証の法人税確定申告書謄本(自昭和四二年四月一日至昭和四三年三月三一日)および法人税修正確定申告書謄本(同年度)

一、収税官吏の蛯原理和に対する昭和四四年一二月一九日付質問てん末書

一、領置してある売渡明細書および請求書一綴(前同押号の九)

判次第三の事実につき

一、収税官吏の杉山博英、桶谷義人、長江昭太郎に対する各質問てん末書

一、収税官吏向井正夫作成の現金預金有価証券等現在高検査てん末書

一、収税官吏森田琢磨作成の現金預金有価証券等現在高検査てん末書

一、収税官吏田川光雄外一名作成の銀行調査報告書

一、収税官吏中川正一認証の法人税確定申告書謄本(自昭和四三年四月一日至昭和四四年三月三一日)

一、蛯原理和作成の桶辰商事(株)よりの仕入れ確認書

一、被告人菅原一郎の検察官に対する昭和四五年五月二八日付供述調書

一、収税官吏の被告人菅原一郎に対する同年三月一八日付質問てん末書

一、領置してある第一七期月次試算表一綴(前同押号の三)、同会計元帳日計表三綴(同号の四)、使用原木帳(自昭和四三年四月至昭和四四年三月)一綴(同号の七)

(法令の適用)

被告人協同ベニヤ株式会社の判示各行為はそれぞれ法人税法一五九条一項、一六四条一項に概当するところ、情状によりそれぞれ同法一五九条二項を適用することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各所定罰金額(判示各 脱額相当)を合算した金額の範囲内で、同被告人を罰金二、五〇〇万円に処する。

被告人菅原一郎の判示各行為は、それぞれ刑法六〇条、法人税法一五九条一項に該当するところ、本件犯行は逋脱額が極めて多額にのぼり、同被告人の責任は軽くないが、各犯行とも総所得額に対する申告額の比率が比較的高いこと、本件後右逋脱につき大阪国税局より更正決定を受けて、重加算税、延滞税等を含む巨額の課税を完納しており、同被告人に改悛の情が顕著に認められ、被告会社の経理態勢も改善されていること、その他同被告人の経歴、業界におけるこれまでの貢献度、信用度ならびに家族関係等諸般の情状を考慮して、所定刑中罰金刑を選択することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で同被告人を罰金三六〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは同法一八条により金一万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとする。

(裁判官 梶田英雄)

右は謄本である。

大阪地方裁判所第三六刑事部

昭和四六年七月五日

裁判所書記官 長尾一郎

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